ローソンとスリーエフの資本業務提携はなぜ延期になったの?

ローソンとスリーエフの資本業務提携はなぜ延期になったの? 

商圏調査・出店調査・エリアマーケティング・FC本部構築展開・社員研修・店長研修・講演講師:コンビニ (2)
  • 《節約社長寄稿》
  • 1.業界の再編が加速するコンビニ業界

近年業界の再編が進むコンビニ業界。ファミリーマートとユニーグループの業務提携やローソンとスリーエフの業務提携等のニュースが昨年も多数取り上げられています。

しかしここで、ローソンとスリーエフの資本業務提携が年末で契約という流れになっていましたが延期となっております。

ここには大手コンビニ各社の業務提携の目的と4位以下のコンビニ各社との目的の違いが大きな要因ではないか?と考えます。

今回は、コンビニ業界の再編の目的の視点から、ローソンとスリーエフの業務提携延期の要因を考察したいと思います。

2.シェア争いが加熱するコンビニ業界

そもそもコンビニ業界はなぜ業界再編が行われるようになったのでしょうか?

コンビニエンスチェーンは、従来は24時間営業を行う小売店ということで便利さを追求し成長を行ってきました。近年では、公共料金の代理受領やATM等の取り扱いにより、地域のインフラとして姿を変えてきています。

コンビニ業界の商圏は、昔半径2km等と言われていた時代ですが、現在では半径500mと商圏範囲が狭くなってきており、キメの細かい出店が必要となってきています。

つまり、出店数がものを言う時代となってきているのです。出店数の多いチェーンの方が、市場認知も早く、シェアを確保できる。つまりシェアの争いとなってきているのです。

その点でもセブンイレブンは、従来からドミナント出店を行い、店舗数は業界NO.1を誇ってきました。2位以下のローソン、ファミリーマートがセブンイレブンに追いつくには、早急な店舗数の拡大が必要なのです。

逆に4位以下のチェーンからすれば、業界大手3社に店舗網を商圏に張られることで売上が大幅に悪化。チェーンとして経営難に陥っています。ローソン、ファミリーマートと業務提携を行うことでこの経営難をクリアしてきたい狙いがあります。

そういう視点で両者の思いが業務提携に繋がっているのです。

しかし、ここで問題があります。大手2社としては、自社のシェアを上げることが目的である業務提携であるため、出来る限り自社看板に変えていきたい思いは強いと思います。

しかし、4位以下のチェーンとしては、自社看板は守りたいという思いで両者の思いが反し、業界再編交渉が難航しているのではないかと考えます。

実際にスリーエフは、当初ファミリーマートとの業務提携の話もありましたが、自社看板が存続できないということで、交渉は進まなかった経緯があります。

  • 3.フランチャイズビジネスの独自性が業界再編を難航させる要因でもある

コンビニ業界の再編は実は、コンビニ本部だけの問題ではありません。

コンビニ業界は、フランチャイズ展開を行っており、各店舗は独立事業を行っているのです。

当然、業界の再編により、看板替えが行われるのであれば、現在まで競合チェーンであった近隣店舗が、同看板のチェーンに変わる可能性も高い状況となります。

コンビニ業界のオーナーからすれば、同看板程、差別化できないことはありません。

その点で、フランチャイズオーナーの理解が得られる形をとるということが、業界再編を難航させる要因となっているのです。

4.業界再編の最大の目的はスケールメリット

ここ近年、業界再編を積極的にローソン、ファミリーマート共に積極的に実施していることは、実はこのスケールメリットが大きいと思います。

スケールメリットとは、量が集まれば、原材料や商品も良いものが安く仕入れることが出来たり、物流コストを低減できる等効果が非常に大きいものです。

フランチャイズの醍醐味とも言えるのがこのスケールメリットです。

実は、この再編にはセブンイレブンの存在が大きいと思います。業界再編が進んで店舗数が伸びても、今年ローソン、ファミリーマート各社の一番の課題はセブンイレブンとの平均日販の格差です。平均日販の格差はチェーン全体の売上の差に繋がるだけでなく、各加盟店オーナーの売上・利益の差として現れます。この差が埋まらない限り、業界1位のセブンイレブンには勝つことが出来ないのです。

そこで業務提携を行い、共同仕入れや共同商品開発を行うことで品質や荒利を改善することがメリットとなるのです、実はここにも一つ障害があるのです。

セブンイレブンは、商品の品質が高いといった声がお客様から多数得られていることは有名ですが、それは全てオリジナル商品を自社工場で作っていることから実現ができています。

品質を上げようとすれば、ローソンはオリジナル商品であるローソンセレクトを中心とした品質改善や荒利改善を行うことが目的となります。実際に業務資本提携を行ったポプラには、ローソンセレクトが導入されています。

スリーエフも業務資本提携するとすれば、その流れを受けることは予測できることです。

そうすると、スリーエフの拘りである、自社ブランドの維持がどこまで出来るのか?という点が交渉を難航させる要因であることは推測されます。

5.まとめ

業界再編の目的を検証することで、今回はローソンとスリーエフの業務資本提携延長の要因を推測しました。筆者は、両者はいずれ業務資本提携を行うと考えておりますが、両社共に業務資本提携の目的と自社ブランドの維持の駆け引きが行われると考えられます。

今後も、両社の動きに着目していきたいと思います。

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