地方百貨店の衰退の理由を探る

地方百貨店の衰退の理由を探る

商圏調査分析・立地調査・エリアマーケティング・FC本部構築展開・社員研修・店長研修・講演講師:百貨店

節約社長寄稿記事

1.地方百貨店が続々と衰退している

地方の百貨店の撤退が後を絶えない。1990年のバブル期には百貨店の市場規模は10兆円とも言われ、小売業におけるシェアも6%あったが、近年では6.2兆円で小売業におけるシェアも4.4%と減少をしてきている。

今後も地方の百貨店は、環境が好転する兆しは見えない状況となっている。

今回は、地方百貨店の衰退の理由と今後の対応について考察をしていきたい。

百貨店業界は、実は売上もシェアも縮小してきているが、実際は、首都圏と地方では大きな差がついている業界ともいえる。

首都圏では、インバンドの影響と国内富俗層の取り込みが出来ており、好調である一方、地方では大幅に売上を落としている現状がある。

このことから次の4つが、百貨店の衰退として大きく起因していることがわかる。

①人口減少が顕著に売上に影響を与えている

人口減少は、地方であればある程、顕在化された問題となっている。実際に都市に人口は集まる傾向が強く、地方での人口減少の歯止めが効いていない。それを補うべく、インバンドによる売上が補っていければ、まだいいのであるが、実際は地方ではインバンド効果もまだまだ影響度としては弱いものがある。

この人口減少は、歯止めが効かない状況となっており、商圏内の人口が減少し、今後も継続して地方が苦戦する要因となっている。

②地方経済の停滞

アベノミクス効果で経済は回復傾向と言えども、地方への波及はまだまだの影響度としては小さい。その結果、百貨店の主要客層である、富俗層の絶対人数が減少している。

そのため、地方経済が回復しなければ、百貨店の主要ターゲットをとらえることはできずに、継続して苦戦することが予測される。

③郊外型のスーパーマーケットの出現

現在、地方では郊外型のスーパーマーケットが業績を伸ばし、更に出店も加速されている。スーパーマーケットでは手軽なブランドや商品が多数陳列され、ファミリー層の取り込みが進んでいる。また、イオン等に代表される大型商業施設では、衣料品や食料品だけでなく、書籍や雑貨、映画館などの娯楽施設、飲食店等も多数出店しており、1日いても飽きない施設づくりが行われている。

つまり、百貨店の競合は地方では同じ百貨店もさることながら、郊外型のスーパーマーケットの影響も大きいと感じる。

特に地方では、車を活用した来店手段となるため、広大な敷地に駐車場も多数完備されている、郊外型のスーパーの利便性は、百貨店にない要素となっている。

④時代がPBへ動いてきている

百貨店が、昔は海外や国内の高級ブランドを扱うことで、成長を行ってきたが、ブランドは全てNB(ナショナルブランド)の商品となってきている。それに加え、小売業でも好調なコンビニエンスストアやスーパーマーケットではNBからPB(プライベートブランド)の開発を積極的に実施し、売上を伸ばしてきている。

プライベートブランドの最大の特徴は、オリジナル商品のスケールメリットを活用し、開発を行うため、当然、比較的価値の高いものをお手頃な値段で供給することが可能という点である。また、各社の独自性も打ち出すことが出来るため、その点で一般的な消費者の受け入れがしやすい商材となっている。

一方百貨店では、NB商品を主力に扱っているため、同じ商品が並ぶという同質化が図られることとなり、差別化がしにくいというのが実情である。

つまり、NBに対するブランド嗜好が薄まってきているというのが、時代背景にあると考察されます。

2.地方百貨店のこれからの対策

上記の要因を考察すると、地方百貨店がとるべく、戦略は3つであると考えます。

①インバンド対策

地方では人口減少は基本的に止まりません。今後も加速されていきます。それを補うべく、インバウンド対策の強化が必要となります。地方の活性化を行う行政との連携と併せて、免税対応だけでなく、海外の方の買い物がしやすい環境の構築、旅行としての導線の確保等の対策が必要となります。

②百貨店の商品の差別化

地方経済の回復をまつというのでは、経営は成り立ちませんので、百貨店事態の差別化が必要となると考えます。国内富俗層向けの商品の充実だけでなく、プライベートブランドの開発等を通じたファミリー層の獲得を広げる取り組みが必要となります。

昔は、百貨店に行くと『楽しい』というイメージ強かったですが、現在はその『楽しさ』が郊外型スーパーマーケットの方が上回っていると考えます。

つまり、百貨店事態の施設の設計が現在の時代の変化に対して、変わってこなければならないとも思います。

テナントの配置変更だけでなく、テナントの内容も『楽しさ』を追求した設計が必要になると考えます。

3.まとめ

地方百貨店は、今後も厳しい環境が続くことが予測されます。

しかし、地方での百貨店は、大きな集客マグネットであることも事実です。

百貨店の周辺にある飲食店や小売店にも大きな影響を与えます。

これは時代の変化でもあり、地方の百貨店が大きく変わらないといけないという現れでもあると思います。地方から新しい百貨店の形が生まれること期待し、今後も百貨店の動向を確認していきたいと思います。

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